
COPDの治療を行っている実際の様子をレポートするこのコーナー。
長田病院の院長で呼吸器専門医の木下正治と、
医療スタッフの看護師、理学療法士、栄養士の話をご紹介します。
まずはCOPDを知ってもらうことです
長田病院の地域における特徴、役割を教えてください。
長田病院は福岡県南部・有明地区の柳川市にあります。柳川市7.6万人と周辺の市・町を合わせて約18万人が医療圏に含まれています。高齢化の進む地方都市ですが、長田病院では、質の高い医療を提供したいという思いを掲げて実践してきました。病院理念と基本方針の中には「安心」、「安全」、「患者満足」を謳い、医療の質を重視しています。特に、生活習慣病の複合ケア・サービスに力を入れ、COPDに関しては、チーム医療によって包括的呼吸リハビリテーションに取り組んでいます。
医師会の講演や市民公開講座などにも積極的に参加し、医師や一般市民へのCOPDの啓発に力を入れてCOPDは治療できる病気だと強調。院内では呼吸器の健康教室を年に2回、HOT(在宅酸素療法)の会を年に2回行っています。COPDの患者様をどのくらい診ていますか?
100人以上の患者様を診ています。開業医の先生から息切れがある患者様を紹介される場合もありますし、感染症がきっかけとなってCOPDがわかる場合もあります。
また職場での健診で40歳以上の人にスパイロ検査を実施していますが、最近の結果では、働き盛りの人たちの6%にCOPDの疑いがありました。COPDは高齢者に多い疾患ですから、高齢者を含めると実際はもっと多いことになります。健診後はどういった指導をしますか?
COPDの疑いのある人を再検査として受診していただきます。ほとんどの方は喫煙歴がありますので、禁煙をすすめます。初期の患者様は自覚症状がなく、COPDのこともご存知ないので、最初は驚かれます。患者様にはCOPDがどういった病気かをよく説明します。禁煙指導にも力を入れているとのことですが?
COPDの予防・治療には禁煙が最も重要です。長田病院では禁煙外来を開いています。禁煙外来に来られる方は何らかの病気があって不安を感じ、タバコをやめないといけないという意志を持っておられます。禁煙を成功させるコツは禁煙に対する動機付けをし、ニコチン依存症であると自覚してもらうことです。主にニコチンの置換療法で指導します。75%ぐらいの方が禁煙に成功されています。COPDの治療について教えてください。
COPDの治療は、禁煙、薬物療法、栄養指導、呼吸理学療法、運動療法、日常生活全般などを含めた包括的呼吸リハビリテーションを中心に行っています。ステートメントにのっとって患者様をトータルに治療するために、健康サポートセンターでプログラムを組み実践しています。(木下)
包括的呼吸リハビリテーションの実際
健康サポートセンターの役割
近年、COPDをはじめ、生活習慣病が増加してきています。患者様をいろいろな角度からサポートするために、実際の生活指導などをコーディネートする必要があったからです。
COPDの治療の基本は、病気との付き合い方を患者様の生活に合わせ指導していくことだと考えています。このため、患者様や家族の方が病気を理解して前向きに自己管理できる環境を作るには、看護師はもちろん、他職種の協力が必要です。
医師、理学療法士、管理栄養士、薬剤師、検査技師、外来看護師、病棟看護師、保健師、医事科が患者様とその家族を取り巻くチームとして動きやすいよう、健康サポートセンターの保健師、看護師がコーディネーターとしての役割を担います。
クリティカルパスに従ってQOL(生活の質)の評価を行い、どういうことをしたいか、食事、リハビリなどの点からプロの目でアドバイスをしていきます。
そして3か月に1回、患者様を多方面から見た再評価(身体・運動・日常生活活動評価)を行っています。患者様を中心に各自最適のケアができるよう、家族を含めチームカンファレンスを行い、目標を決めてそれに向かい、呼吸チーム、患者様とその家族ともに努力します。(看護師長)栄養指導はどのように行いますか?
栄養管理はCOPD治療の包括的呼吸リハビリテーションの重要な構成要素のひとつです。
まず、患者様の身長、体重、年齢をもとに、必要エネルギー(kcal)を算出します。
患者様のQOL(生活の質)の低下、増悪、呼吸不全などを予防するためにBMIや筋肉量が正常な方に対しては、それ以上、低下させず持続できるように、BMIの低い(やせ)方に対してはそれ以上やせさせず、また、筋肉量を増やせるように、BMIが高い方に対しては正常値に近づけて呼吸がしやすいよう食生活の面からサポートしていきます。
ただ食事といっても、年齢、家族構成、嗜好、アレルギーの有無、運動量、薬、趣味、行動範囲、性格・・・など個々で全て違いますから、それらを考慮しながら管理栄養士として、患者様の意向を取り入れた内容で栄養指導を行っています。高エネルギー、高たんぱく質が基本になります。
3か月に1度は体重、脂肪量などを測定し、食事の調査も行い、問題点や改善点を患者様に指導します。(管理栄養士)リハビリテーション科の指導を教えてください。
運動療法についてはエルゴメーター(固定式自転車)によるトレーニング、歩行訓練、階段昇降訓練を中心に行います。比較的楽に行えるように訓練メニューを作り、患者様自ら進んで訓練に取り組んでいただけるように指導しています。その他、楽な姿勢の指導、楽な呼吸法、労作時の呼吸法など患者様に適した指導を行っています。
退院後は外来または訪問リハビリを利用していただき、日常生活においての指導を行っています。
インフォームドコンセント(説明と同意)を通じて、患者様との信頼関係を得る努力をしています。まず評価後には患者様と一緒に評価表を見ながら説明を行い、訓練の必要性を理解していただきます。同意を得た後、訓練を開始。訓練を進めていく中で常に注意している点は、「決して無理をしないこと」それに「がんばる」という言葉を使わないことです。
患者様一人一人が「ここなら安心」と思われるような病院になること、さらにはリハビリテーションの場を、患者様同士の情報交換の場そしてコミュニケーションの場にしていくことが今後の課題です。 (理学療法士)
患者様の声
前向きな治療が重要だと思います。
COPDと診断されたのは3年前です。48歳のときに急性肺炎にかかり、病気になったことがきっかけで、家族のすすめもあって、きっぱりとタバコはやめました。それまでは27年から28年の間、ほとんど毎日、1箱のペースでタバコを吸っていました。その後、山登りに行ったとき、同年代の人たちより自然に遅れていたのです。今から思えば、これがCOPDの始まりでした。自分はタバコをやめましたが、職場ではタバコを吸っている人が多く、今のように換気設備も行き届いていません。煙に囲まれたような生活が続いていたのです。娘と一緒にデパートに出かけて、歩いていても一人だけ遅れるといったようなことが何度かあったのですが、心臓が弱って、息切れは「歳のせいだろう」と思っていました。心臓の検査も受けましたが、どこにも異常が見つかりませんでした。
3年前、急に息ができなくなり、苦しくなって病院に行きました。COPDのような病気があるなんて思ってもみなかったです。急性増悪で、入院することが重なりました。病院に行くのにも、休み休みに歩かないと苦しくなるような感じでした。治療は吸入薬を使用しながら、半年前から酸素療法も始めました。本当に体が楽になりました。もし薬や酸素療法がなければ、今のような生活はできません。酸素療法を始めたときは、人目が気になりましたが、今は酸素ともうまく付き合っています。ちょっときつい運動をするときは酸素量を増やしたり、安静時には酸素量を減らしたり、自分に一番適した量を体で覚えて、調節できるようになりました。酸素量や、運動量、体温、その一日にあったことなどを療養日誌につけて、通院時に先生に見ていただきます。
リハビリは週に1回、通院のたびに、理学療法士さんに指導していただきます。栄養士さんには食事の指導、看護師さんには生活全般の指導をしてもらっています。
今は車の運転もできるようになり、行動範囲も広がりました。長田病院の木下先生をはじめ、医療スタッフの皆さんに見守られながら、あと10年、20年と人生を楽しむつもりです。
(65歳、通院3年、在宅酸素療法)





























